【 痰飲 】( たんいん )
 広義 : 津液の輸布や排泄の障害により形成された病理産物。有形の痰と無形の痰を含む。狭義:四飲(懸飲・溢飲・支飲・痰飲)のひとつ。

《 引用文献 》
@「痰」は、古代には「淡(澹)」と表され、水がかすかに流れる様子を意味する。「飲」とは水の意味である。「痰飲」とは体内の水液運化が失調し、身体のある部位に停滞したことによって発生する病証のことを指す。一般に、稠濁なものを痰、清希なものを飲と呼んでいる。痰飲には広義と狭義の2つの意味がある。広義の痰飲は、人体に生じる水飲病の総称である。水飲病は多くの場合,肺脾腎三臓の機能失調・三焦の気化障害により、水液が輸布できなくなり発症する。治療では温補脾腎・化飲利水を原則とする。針灸治療では,手太陰肺経・足太陰脾経・足少陰腎経の経気調整を主とする。臨床では、懸飲.溢飲・支飲・留飲・伏飲などに分類される。一方,狭義の痰飲は各種の飲証の中の一類型である。飲証は水飲の停滞の部位により、痰飲・懸飲・溢飲・支飲の4つに分類される。そのうち痰飲は,水飲が腸胃に留まった病証である。これは虚証と実証に分けられる。虚証の主要症状としては、胸脇部のつっぱり感や膨満感が強い・胃?部の痞え・胃の中に振水音がする・清水痰涎を嘔吐する・胃?部と腹部は暖めるのを喜び、冷やすのを嫌がる・動悸・息切れ・めまい・目のかすみ・食事の量が少ない・便は薄い・体は徐々に痩せていく・苔白滑・脈弦紬滑がみられる。これら、脾陽虚弱により、水湿が運化できず、水飲が胃腸に停滞したために起こる症状である。治法は温補脾陽・化飲利水を主とする。実証では主として、胃?部が堅くなり膨満する・下痢し排便後楽になるが、すぐ後で胃?部が堅くなり膨満が起こる・水液が胃腸を通るときにタポタポという音が聞こえる・苔白膩・脈沈弦などの症状がみられる。これらは、水飲が胃腸の間に留伏することで引き起こされる症状である。(中医基本用語辞典)
A病名。古くは澹飲、淡飲とも言われた。体内の輪化されない過剰の水液がある部位に停留して発生する疾患をいい、稠濁のものを痰、清希のものを飲と区別している。@諸飲の総称。肺・脾・腎などの機能低下で水液が輸化されずに発するもので治療は温薬でこれを話するを主とし、脾腎を温補して本を固め利水遂飲して表を治す。
A四飲の一つ。飲邪が脾胃に停滞して発する疾病。胃内停水、流飲ともいう。肥えていた体が痩せてきてきたり、飲食減少、腸鳴便溏、あるいは心気短氣や涎沫の嘔吐などを表す。治療は温陽化飲の法にしたがって、苓桂朮甘湯や金匱腎気丸を用いる。(中医日漢双解辞典)
B病名。体内の水湿が化すことが出来ず、痰飲が作られた病態。@多種の飲証・痰証の総称。
A飲証の一つ。飲邪が胃腸に留まり引き起こされる。(中医大辞典)